由里りんのぷらいべ~となお時間

白石由里が、たびてつの記録、ヲタの記録、その他ぷらいべ~と(笑)な出来事をいろいろと語るブログ♪

書評『十津川警部 アキバ戦争』

西村京太郎作『十津川警部 アキバ戦争』(徳間書店)の書評です♪
以下、思いっきりネタバレしてますので、未読の方など都合の悪い方はご遠慮ください。

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(以下、ネタバレ注意!!!)
まず、出版社が徳間書店という点からしてすでに爆笑モノです(笑)。さすが、ヲタ出版の実力者、徳間書店!!! 書き下ろしで西村先生にこういう作品を書かせたというのは、やはり徳間書店の実力とプライドの為せる技でしょう♪

んで、この作品、読み終えた後であらためて思い返すに、いたるところにヲタの心性をくすぐる演出が為されていてすごいです(笑)。強引な言い訳でメイド喫茶へ衣川を誘う画商菊村多恵子の息子・要氏も相当に綾しいですが(笑)、あんな強引な言い訳でメイド喫茶に結局行ってしまう衣川も相当に綾しいです(笑)。アキバとオタクどもとメイド喫茶の描写がやたら細かい西村先生…もちろん取材には行かれたのでしょうけれどそれにしても…まさか、西村先生も、かなりのヲタですかあ???(笑)
本作のヒロイン(?)かつ被害者である明日香ちゃん…この明日香って名前、まさか某●ヴァからの由来ではないでしょうね?(爆) そして、自分の亡き娘に似ている明日香ちゃんに感情移入してしまうわけでして…まさか「娘(に似た女の子)+メイド姿」に萌えたわけではあるまいな?(ちゅど〜〜〜〜〜〜ん!!!) 母が病のために故郷に帰らなくてはならない明日香ちゃんは、衣川さんに絵を描いて欲しいと頼むわけでして…なんかこの明日香ちゃんの身の上が「名作劇場系」的萌え心をくすぐります♪(ちゅど〜〜〜ん!!!) そういえば、郷里が山形ってあたり、なんか「おしん」を意識してません? このあたりもなんか「名作劇場系」的萌え心を…(爆)。そんな明日香ちゃんに亡き娘の服を着せて絵を描いたり、その後、この明日香ちゃんの夢を叶えてやりたいと、セレブな生活をさせ、高級ホテルで“父娘”の生活を楽しむというシチュエーション…衣川さんの心情は純粋に甘酸っぱく切ないですし涙を誘いますが……このシチュエーションが、なんというか、ある意味「名作劇場系」的萌えとでも言いますか…つまりっ!!! 萌え心をもつ読者にはズギューン!!!であります♪(ちゅど〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!) しかも誘拐されてしまうという悲劇のヒロインぶり!!!!! 最後にはちゃんと生還して郷里の山形にも無事に帰れますので、ご安心を♪

んで、明日香ちゃんが誘拐されてからは、西村作品らしく、新幹線での身代金の受け渡しが出てきたりしますし、アキバが舞台というシチュエーションにふさわしく、つくばエクスプレスが作品の重要な要素として登場してきます♪ このあたりの状況は、西村作品らしいいつもの犯人との駆け引きって感じで、特筆すべきことはないのですが、ただ、ツメの甘さも見られます。JR東日本の新幹線ではもはや車内改札は原則としてしないはずなのに、車内改札を終えた車掌から刑事が身代金を運ぶ多恵子の切符の内容を尋ねたりしています。この車両、つばさ号グリーン車なのですが…私、つばさ号グリーン車に乗ったことがないので、もし、つばさ号グリーン車では車内改札が今も実施されているという情報がありましたら、教えてください☆ あと、これは完全な凡ミスですが、列車名を「つばめ」と誤表記している箇所がありましたゾ! この誤記、鉄ヲタとしては許せません!!!(苦笑)

中盤以降、オタク三銃士なるものが登場しまして、こいつら3人の描写については、西村先生、かなりオタクを研究されたとみえ、かなり笑えます(笑)。もしかすると明日香ちゃんが犯人かもしれないという恐怖も持ってしまい、それで警察に全部の情報を伝えない彼ら…おいおい、それは間違ってますぞ(笑)。明日香ちゃんに発信機つきのアクセサリーをお別れのプレゼントに渡してしまうのは、ストーカーですぞ(苦笑)。まあ、それが役立って、結局明日香ちゃんを助け出せるわけですが、その後こいつら、発信機悪用しなかったんだろうねえ?(苦笑) まあ、明日香ちゃんは結局犯人でもないし、下心があって衣川氏に近づいたわけでもない(と思われる)のでして、純粋に被害者だったわけですけど。
だが、この三銃士以外にも、実は警察のキレぶりもすごい(笑)。捜査のためとはいえ、2万円もする抱き枕を買ってしまう三田村刑事もかなりキレてますが(同行していた女刑事・北条さんが憐れだ(笑))、それ以上に、いくら捜査のためとはいえ、50万円のフィギュアを購入するという十津川警部と、それを承諾してしまう三上刑事部長も相当にキレまくり(笑)。一応事件が無事に解決したからいいようなものの…結局警察の力で明日香ちゃん助け出されたわけではありませんからねえ…。…いったい操作費=国民の血税を何だと思っているんでしょうか?(笑)

犯人である電器店の社長は「アキバは電気の街であって風俗の街ではない」ということを言っており、メイド喫茶とかオタクな店の氾濫を快く思っておりませんが、この点、個人的にはこの社長に共感する部分があります(笑)。このアキバの抱える葛藤を今回の犯行動機の背景心情の一つに織り込んでいるあたり、西村先生、さすがです(笑)。そして、直接の犯行動機においては、この電器店、最近の大型電器量販店が進出していて経営難という状況なわけで、それで金に困って誘拐事件を起こすというわけですが、これもまたアキバをよくとらえていらっしゃる(笑) ずばり「Y電気」という、某ヨ●バシを彷彿とさせる架空の大型電器量販店名が登場するのが笑えます(笑)。

前述したとおり、結局、オタク三銃士が明日香ちゃんも身代金も取り返すわけでして、警察の面目丸つぶれ…というか、オタク三銃士、警察に知らせずに自分達で犯人しばりあげて勝手に人質を連れ出してしまうのは、もしかして犯罪なんぢゃあ?(笑) そのうえ、衣川氏から「必要経費」を差し引いた差額だけ返すのもなんだかなあ…。当の衣川氏が納得しちゃっているんだから、結局警察も不問にするしかないというのが、読者のフラストレーションをかきたてますが(笑)。しかも彼ら、ある意味欲がない(笑)。律儀に領収書を詳細に書いて衣川氏に提示して承諾のうえで経費もらっているんですから。きっと彼らは、衣川氏が返せと言ったら素直に返すんでしょうね。明日香ちゃんの手前(笑)。

結局、一人も死者が出ないという、西村作品としては珍しい作品ではないでしょうか? 一人も死者が出ていないことから、結果的にこの作品、コメディーミステリーとなっております。明日香ちゃんは無事に郷里に帰れたし、衣川氏との交流も続いているようですし、オタク三銃士も相変わらずな感じですし…。今回は、十津川警部はじめ、警察の皆様、結果的にヘタレに終わってしまってまして、メンツが立ってません(笑)。西村ミステリーファンとしてはある意味不満も大きいかもしれませんが(笑)、「オタ+西村ファン」は必読だと思いますぞ♪